【賃貸業界裏話】賃貸契約時の仲介手数料の仕組みと行方

仲介手数料って聞いたことはあるし払ったこともあるけどその仕組みって意外と知られていないのではないでしょうか?

そんな仲介手数料の仕組みをどこよりも詳しく説明していきます。

突然ですが、不動産屋さんってどうやって儲けているか知ってますか?

八百屋さんなら野菜や果物を売って儲けます。美容師さんはカットなどの技術を売って儲けます。

では賃貸の不動産屋さんはどうでしょうか?
部屋を貸して家賃で儲けているのでしょうか?

実は不動産屋さんは仲介業と言って、賃貸物件を大家さんに代わってお客さんと賃貸契約を結び、その仲介をした手数料で儲けているんです。

この時の手数料のことを「仲介手数料」と言います。

ということは、不動産屋さんはこの「仲介手数料」が主な収入源ということになります。
ではその仕組みはどうなっているのでしょうか。

仲介手数料の仕組みと行方

お部屋を借りたことがある人は、契約の前に契約金の内訳が書いてある「精算書」を受け取りますが、その中に「仲介手数料」と書いてありますので見てみましょう。
さて、この仲介手数料は、皆さんが不動産屋さんで賃貸契約をした時には必ず支払うことになっています。

仲介手数料については
仲介手数料を発生させない方法で詳しく説明しておりますので是非ご参照ください。

それでは仲介手数料が何であるかがわかったところで、その流れについて見ていきましょう。

不動産屋さんへ行くといろんな物件の図面を見せてもらえますが、その図面のいちばん下には業者の名前と共に左図にような表を目にします。

これはいったい何を意味しているのでしょうか。

実はこれは、この物件が決まった時に支払われる手数料を誰が負担するのか、また受け取った手数料を誰がもらうのかということを現しているのです。

まず表の上の段です。「手数料負担の割合」は借主100%とあります。これは家賃の1ヶ月分相当額を100%とした場合、契約時に借主が家賃の1ヶ月相当分(100%)を丸々支払います。(手数料には消費税がかかりますので念の為・・・。)

次に下の段、その手数料は客付の業者、つまりお客さんを直接連れて来た仲介業者に全額入ります。 そう見ると実にわかりやすい表ですね。

ここでひとつ疑問がでます。この表を見ると元付が空欄になっていますが、元付つまり物件を管理している業者には手数料は入らないのか?
そんなことはありません。ちゃんと入るようになっているんです。

元付の業者は大家さんからもらえるように話が出来ているんです。
手数料?違います。「広告宣伝費」という名目です。

ここでちょっと宅地建物取引業法(以下、宅建業法)について触れます。
賃貸の媒介に関して業者が依頼者(大家さんとお客さん双方)から受け取れる報酬(手数料)の合計額は、家賃の1ヶ月分相当の金額以内にしなさいって言う決まりがあります。
つまり「手数料」という名目で受け取れるのは1ヶ月までなので、あえてここでは「広告宣伝費」という別項目に計上するんです。

じゃあ、「広告宣伝費」については決まりがないかといえば、宅建業法にはこうあります。

依頼者の依頼によって行う広告の料金に相当する額はこの限りではない。

つまり、手数料に関しては決めがあるが、広告費については例外だよってことです。

大家さんの依頼の有無や、本当に宣伝広告を打っているかどうかに関わらず、物件を決めた以上大家さんはありがとうって言う意味を込めて?支払っているのが現状でしょう。 というよりほぼ慣例化しています。

もうひとつ疑問、先ほど宅建業法の中で、賃貸の媒介に関して業者が依頼者(大家さんとお客さん双方)から受け取れる報酬(手数料)の合計額は、家賃の1ヶ月分相当の金額以内と言いました。

ということは大家さんとお客さん双方の負担の合計が1ヶ月分になれば、別に借りる側が丸々負担しなくてもいいんじゃないの?ってことになりますが、これはあくまでもお客さん寄りの見解であって、現状ではほとんどのケースで、借主が1ヶ月分を負担しています。

本来なら上の表に書かれている通りの負担になっているのでしょうが、このような図面はめったにお目にかかれません。

仲介手数料を1ヶ月分払うのを拒否できないわけではないでしょうが、「じゃあ、この物件はあきらめてください」って言われてしまうでしょう。 今のところどうすることもできません。

右のような表をたまに目にすることがあります。
「やった、手数料ゼロじゃん!」なんて喜ばないで下さい。
この場合の貸主負担の100%はほとんどのケース(いや全てだな)で広告宣伝費計上になります。

したがってお客さんには通常通り家賃の1ヶ月相当分の手数料請求が行きます。 この表のケースは貸主自体が不動産業社であったり、投資マンションの管理会社というところが多いです。

もうお気づきの方もいるかもしれませんが、この場合貸主から100%の宣伝広告費がもらえて、しかも借主から仲介手数料として100%もらえます。
ということは客付けの仲介業者には家賃の2ヶ月分相当額(200%)が入ることになる、非常においしい物件であるということがわかります。

余談ですが、このように宣伝広告費を出してくれる物元さんのことをバック業者といいます。 つまりバックマージンをくれる業者ということですね。
こういった業者さんは賃貸営業をやっている人は皆頭に入っており、お客さんに物件を紹介する際、優先して手を付けるリストになるのです。 営業マンのやる気という面では充分うなずける話です。

次はこれ、今度は業者間の手数料分配の問題です。 見方はもうおわかりですよね。
借主が負担した手数料を元付と客付双方の業者で二分するという意味です。

業界の言葉で言うと「折半」の物件と言います。 同じ労力をかけても身入りは半分なので不動産屋さんにとっては気の進まない物件です。

これはどういうことかというと大家さんが「広告宣伝費」を払わない物件なんです。 前出の宅建業法では、広告の料金は「依頼者の依頼によって」発生するとありましたが、これはまさに依頼者の「依頼」(広告料は払いませんっていうこと)が無いんです。 といって強制もできません。

とかくこのような例は、人気エリアが多く、黙っていても決まってしまうような物件に多く見られます。 東京でいえば、渋谷寄りの東横線沿線の物件に多く見られます。

では、これはどういうことでしょか?
そうです、大家さんが広告宣伝費として半月分払っていることが予想できそうですね。 そうすれば両社とも75%ずつです。

ちなみに、いままで説明した手数料の分配表ですが、不動産屋さんに行って図面を見たときには正式な表が隠されているケースが多いです。

物件図面の最下段を見ると不動産屋さんの名前が入った帯が刷られていて、ここには本来物元の業者名になっています。 その右横に手数料分配表があるのですが、お客さんに見せるときにはこの帯を自分の社名が入った帯に変えて出すのが常です。 その際に分配表も隠れてしまうのです。 ですからこれをみて「ああ、この物件は何パーセントだな」なんて思ってもあまり意味がありません。

この表はもともと業者間の暗号みたいなものですのでお客さんに見せる義務もないのです。 あしからず・・。

不動産業者と広告宣伝費

今までの説明で、物件によって不動産屋さんに入ってくる収入の合計が違うことがわかりました。
通常という言い方が良いのか分かりませんが、多くのケースは1件契約して100%です。
しかしこれが基準になると「折半」の物件が損した気分になるのは同じ人間なら理解できることです。

同じ労力で物件を決めても収入が50%と100%だったらどうでしょうか?
あなたが不動産屋さんだったらお客さんがもしこの2種類の物件で迷っていたら(もちろんお客さんは手数料分配のことは知りません)どっちを勧めるでしょうか? わかりますよねえ。 お客さんに見せる図面には、こんな感じでいろんな種類の物件がありますが、折半の物件をすべて抜いてある業者も実際ありました。
つまりお客さんが見ることのできる物件は全て100%以上の物件ばかりということです。 どうですか? 信じられますか?

いま、100%以上と言いましたが、1件の収入が100%以上(家賃の1ヶ月相当以上)になることなんてあるのでしょうか。 それがあるんです。
そのひとつは、先ほどあったような200%物件で、物元の業者から宣伝広告費がもらえる場合。

別の方法もあります。
表で100%の物件、つまり借主からの仲介手数料のほかに大家さんからさらに1ヶ月分の広告料がでる物件の物元が直接お客さんをつける場合です。
この場合は、客付=物元なので大家さんとお客さんからダブルで入ってくるのです。 あくまでも仲介手数料という名目では1ヶ月分なので法に触れているわけではありません。(ちなみに手数料の消費税は外税・広告費は内税が常です。) ここまで話せば不動産屋さんが物元になりたい理由がわかりますよね。

たまにこんなことがあります。 他社の募集図面で物件を知った仲介業者が大家さんを探して直接取引き交渉を行うことを「抜き」行為といいますが、バリバリの仲介業者になると社命で行うことも少なくありません。

大家さんがOKしてしまえばこの業者も物元になれるのです。 業者としてはこのようにして自社の管理物件を増やしていくのですが、このやり方はバレれば業者間トラブルのもとです。
よく、詳細な住所やアパート名を入れていなくて、いかにもやる気のなさそうな募集図面を目にすると思いますが、これは勝手に現地に行かれないように抜き行為対策としているものも多いのです。

このように大家さんを抜いたり、地図で一軒一軒訪ねてまでして物元になりたいという裏には、物元になれば50%が100%に、100%の物件が200%になるという手数料の増減の事情があるのです。

宣伝広告費は1ヶ月だけ?

仲介手数料は、宅建業法によって家賃の1ヶ月分相当額+消費税までと決められていますが、広告料は決めがありません。

仲介手数料を含めて、収入が1ヶ月分を100%とすると、いままでの説明では200%が最高のように思えたかもしれませんが、実は私が知る最高は400%というのがありました。
つまり、一件きめたら家賃の4ヶ月分が仲介業者に入ってきた物件も過去にはありました。 家賃8万円の物件で考えると、32万円です。
内訳は8万円が仲介手数料で残り全部が広告宣伝費ということになります。

これはどういうことでしょうか?
たしかに仲介手数料の8万円は借りる側が払いました。 じゃあ、広告費の32万円は大家さんが払ったのでしょうか? 表向きはそうなってます。

通常大家さんは便宜上、入った礼金のうち1ヶ月分を広告費として業者にバック(広告費のことを別名バックとも言います)します。 (これはあくまでも考え方の問題であり、礼金が即広告費という理解は間違いですので誤解しないで下さい。) ということは大家さんには礼金1ヶ月で良いことになります。
ここで、礼金1ヶ月で募集するので無く、2ヶ月で募集すると100%バック、礼金3ヶ月で募集すれば300%バックとなり、手数料と合わせると400%となるのです。

なんのことはないですね、借主が負担して(払わされて)いたことがわかります。
ただし、前にも言いましたが、広告費は依頼主の依頼がなければ明らかに違法です。 このような広告費の問題で大手の不動産業者が摘発されたという例もあります。

一昔前は日常的に礼金上乗せは行われていましたが、現在では大家さんから広告費をもらわない業者(特に大手)が現れてきました。 その業者が管理する物件の手数料は当然折半です。
こうなってくると、いままでバックで数字を延ばしてきた仲介業者はやりにくくなってきます。

今ではさすがに礼金3ヶ月なんていう物件は見なくなりましたが、2ヶ月が主流の現在、1ヶ月上乗せされているかどうかというのは借り主側には分かりません。
しいて言うならば、募集図面を見て明らかに修正してありそうだという物件を疑ってみるくらいでしょうか。 しかし、あまり疑ってばかりいると本当に良い物件を逃すことにもなりかねません。

それに貸主が率先して、「この物件を決めてくれた業者さんにはバックをだしますよ」なんて言ってくれるありがたい貸主さんもいます。 悪意を感じながら?礼金を上乗せするよりこのように堂々とバックをいただきたいものである。

余談ですが、このようなバック物件を決めることを業界では「バックをはめた」とか「バックにはまった」とかいいます。 一般的にはバックが出る物件というのは条件的に辛い物件が多いものです。 「はめる」ということは営業するということです。 黙っていても決まる物件とは明らかに違うのです。 このような物件をどのような営業で決める(その気にさせる)のかは営業マンの手腕次第ということです。

まとめ

いかがでしたでしょうか? 同じ労力を使うのなら少しでも収入があったほうがいいですよね。
不動産屋さんだって同じこと、折半物件より100%以上の物件を勧めて来る傾向は否めません。

バックにはめる業者だから悪徳だとかこのようなことを手口などと言って非難している人もいますが、悪意があればそう言われても仕方がないかもしれません。 しかし、先ほども言ったように営業が必要な物件こそが不動産屋さんの長年の経験で得た営業手腕の見せ所です。

それでお客さんが納得してくれれば、一生懸命物件の宣伝をしてくれた人に対しては広告費は支払う意味があり、受け取る側も権利があるというものです。

今では礼金の上乗せをやっているところはないと思いますが、物件の事情や大家さんの好意で宣伝広告費をはずんでくれる物件は存在します。 こういう物件があると営業マンもやる気があがります。

広告費とは、雑誌等の掲載費だけでなく、このような営業トークにも発生して然りだと私は思います。 宅建業法という曖昧でちょっと古くさい法律を変えない限りこのような不透明な手数料構造は改善されないのかな?

ライター紹介

shioG

投稿者プロフィール

【専門分野】芸能、不動産、保険、インターネット全般、ネットビジネス、SEO対策、ネットマーケティング他
※筆者の記事はすべて自身の経験に基づいた事実・見解を述べている。

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