賃貸契約を締結するには必ず不動産屋さんに足を運ぶ必要がありますが、お部屋探しの初めの段階では今ではほとんどの方がインターネットで何かしら検索をするのではないでしょうか?
昨今になってはほとんど見られなくなったのが賃貸情報誌です。
本屋さんで探すのも大変なくらいじゃないでしょうか。
その雑誌がまだあるものとして各メディアの仕組み説明し、実際に不動産屋さんはどのようにして物件を探すのか、またその違いを説明したいと思います。
目次
雑誌とインターネット(賃貸情報誌とインターネットの特徴の比較)
※現在は賃貸情報誌はほとんど見なくなりましたが参考までに。
賃貸情報誌 | インターネット | |
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特徴 | 不動産屋さんが有料で雑誌社と契約し、掲載している。 1物件あたり数千円で、たくさん載せるとそれなりに割り引きもある。 原稿を出してから店頭に並ぶまで2~3週間を要す為、とかく情報が古いなどと言われている反面、掲載にあたっての審査は非常に厳しく、おとり物件や既に入居者が決まっているようないいかげんな情報を載せようとすると、徹底的な原因究明の末、結果によりその業者にはペナルティが課せられたり取引中止となる為、業者側も慎重にならざるを得ません。 その結果、かなり厳選された情報が手に入る雑誌もありました。 |
インターネットには、各不動産屋さん独自で運営しているものと、物件情報を専門に集めてひとつのデータベース化し、ユーザーに自由に検索させる物件検索サイトとがある。 物件検索サイトの場合、物件情報掲載料は雑誌に比べて各段に安い。 中には一定料金で物件数に制限無しという物件検索サイトも存在した為、自社物件の掲載よりもむしろ仲介業者が流通物件を数多く掲載する傾向があった。 こうなると、物件入力先行で、終了物件の削除をしないので、終了している物件がいつまでもデータベース内に残っていたり、同じ物件が数多く掲載されていたリという弊害がたびたび生じていた。 |
業界の利用度 | 不動産屋さんがお客さんから依頼されて物件を探す時は雑誌は必要不可欠なアイテムであったが、今は雑誌の種類がほとんどないのでその探し方も変えざるを得なくなった。 インターネットに載っていない物件が雑誌にはたくさん載っている場合もあった。 賃貸情報誌は業者にとっては業界紙のようなもので、定期購読しているところも多かった。 |
実際に不動産屋さんが物件を探すのにインターネットを利用しているかといえば、上記のようなエンドユーザー向けの物件検索サイトはあまり利用しません。 利用するとすれば、業者専用のレインズや、信頼性の高いサイト、その他業界の情報網を主に利用している。 |
上手な使い方 | 物件情報を掲載している業者の数が多いほど情報量が豊富でした。 「週刊賃貸」等の特定企業発行の雑誌より、※前「ふぉれんと」のようにたくさんの企業が情報を持ち寄ってできている雑誌の方が物件の偏りもなく良かったです。 ※「ふぉれんと」もよく利用していたが、残念ながら現在はありません。 |
インターネットの場合、気になる物件を見つけたらその場でお問い合わせができるという利点があります。 しかし、問い合わせをした業者のうち実際に返事が帰ってくるのはどのぐらいでしょう? また、問い合わせをいれる側も手当たり次第問い合わせボタンを押してしまって、いざ業者から連絡があってもどの物件で問い合わせたのかわからなくなってしまったなんていうケースがよくあります。 インターネットの場合、便利な反面お互いの意識が薄くなりがちです。 このような便利なメディアを上手く使いこなすにはそれなりのやり方がありそうです。 |
総括 | それぞれ、物件の紹介の仕方は違っていても、載せる物件の基準は何ら変わりありません。 純粋に自社物件の紹介という目的で載せる他は、広告目的です。 メディアはたくさんのお客さんの目にとまってくれて、たくさんの問い合わせをもらう為の道具なんです。 そういう物件にはある基準があります。 <広告掲載物件の選択基準(一般的に反響を期待できる物件)> |
私の経験上、雑誌やインターネットで問い合わせを受けて、その物件でそのまま決まるケースは極めて少ないのが現状です。
実際には、そこでたまたま知り合った業者に他の物件を紹介されるというパターンです。
上の表を見てもわかる通り、プロの不動産屋さんは私たちが利用している一般的な物件検索サイトは使っていないのがわかります。
※筆者が繰り返し言っているように、雑誌やネットでは相手の印象をみてから実際にお部屋探しを依頼する業者を探すアイテムとして利用するのが良いのです。
では、次に不動産屋さん(プロ)のお部屋探しについて見てみることにしましょう。
不動産屋さんは実際どのようにしてお部屋を探しているのでしょうか。
不動産屋さんの物件探し
不動産屋さんが物件を探すことを「物出し」って言います。
お客さんからお部屋探しの依頼を受けた不動産屋さんは、実際どのようにして物出しして、紹介してくれるんでしょうか。
これも不動産屋さんのタイプによって違いがありそうです。
自社管理物件を多く持つ元付業者(地場不動産店・管理会社系不動産店)
自社管理物件優先の紹介が中心。
つまりお客さんの希望する物件が自社管理物件の中になければそこで終了。
他社をあたって広く探すという方法には消極的である。
反面、お客さんの希望に合った物件があれば、家主直なので契約まで非常にスムーズに早く話が進む。
紹介してくれる物件の数は多くない。
元付業者の中にはあえて物件を流通させないものがあります。
こういう物件を巷では「隠し物件」と言うらしいが、タイミング良くこのお店に入ればめぐり合える物件です。
この手の物件は条件が良く、わざわざ他の業者に広く情報を公開して客付けを依頼するまでもなく、自社で入居者を探せる、またそのほうが仲介手数料+宣伝広告費が満額入ってくるのであえて隠しているのです。
私、個人的にはこのような不透明な情報公開は嫌いなやり方です。
自社管理物件が少ない、あるいは全く持たない客付専門の仲介業者
もともと自社管理物件が少ない、あるいはほとんど無いので、流通物件を頼りに探しまくる。
行ったことがある人はわかりますが、お店の中には各沿線別に区分けされた間取り図面が棚に大量にビシッと整理されています。
この手の業者は情報量が決め手になるので、客前で電話かけまくりのFAXガンガンフル稼働の様を目に出来ます。
やる気が違います。
雑誌・インターネット・管理会社・大家さんの情報をフルに活用して探すので、紹介物件の量は地場の不動産屋さんの比ではありません。
しかしあくまでも担当者の経験によるものなので、そのバラツキがあるのは否めない。
基本的に、流通物件中心に探すことになりますので、左のような「隠れた物件」はこちらには出回ることはありません。
しかし、最近はこれらの仲介業者も積極的に自社管理物件を獲得する動きがありますので、そうなってくると情報量・人当たりの面で地場の比ではなくなってしまいます。
流通物件と先物物件
「【賃貸予備知識】不動産屋さんによって紹介物件が違う?」
のページで「流通物件」という言葉が出てきましたが、もう一回説明しておきましょう。
そのページで、アットホームの説明もしました。
大家さんから物件を預かると、不動産屋さんはアットホームやマイソクを利用して、図面を各業者に配布して、広く客付けを依頼します。
これを流通物件といい、どこの不動産屋さんでもお客さんに紹介できる物件です。
そして、この流通物件を、元付けの許可を得て広告掲載された物件を先物物件といいます。
ちょっとややこしいですね。
先物物件の特徴は、契約時に元付けと客付けの2つの不動産屋さんが絡むことになるので仲介手数料を2社で分けることです。
(先物物件は既に仲介業者が2社入っているので、さらに他の業者は入ることはできません。)
先物物件かどうかということは、業者間の仲介や手数料の問題ですので、一般の皆さんには直接的には関係ありません。
物元と直接契約したから仲介手数料が半分に(安く)なるということもありませんのであまり気にしないほうがいいです。
しかし、業者間には、この先物物件をめぐって様々な問題が生じています。
先にも言いましたが、先物物件はいろんな業者が積極的に宣伝してくれるので物元は本来なら歓迎するべきでしょう。
しかし、現状はそうはいきません。
先ほど、先物物件掲載とは元付けの許可を得て掲載された物件広告と言いましたが、なんと無断で広告掲載しているところが実に多かったのです。
主だった物件検索サイトでは、無断掲載をしないよう再三注意を促しています。
しかし、先物専門で広告を打っているところは一日に何十・何百という物件を入力しているので一件一件いちいち許可をとるのは非常に手間なのです。
しかも許可をお願いしてOKしてくれる元付け業者も意外に少ないのも事実です。
しかし客付け側の業者から言わせてみれば、逆にお宅の物件を宣伝してあげてるんだぐらいの気持ちでいるでしょう。
実際私も掲載を断られるたびにそう思ったものです。
先物物件をメディアに掲載すること自体は悪いことでもなんでもありません。
元付け業者が快く物件の掲載を許可しない理由として前出の「隠し物件」だからという理由が挙げられますが、その他に重要な問題として「掲載業者のモラルの低さ」があるのです。
「反響」がくるからといって、とっくに終わっている物件を掲載したり、物元業者に許可を得ないで大量に物件検索サイトに無断登録したり、借りる側へ対する情報提供ではなくお客さんを引く為だけのおとり物件として利用する業者も後を絶たなかったのも事実です。
何も知らないユーザーは、良い物件を見つけたと思って電話しても、その物件のことより来店を強要したり、お店に来ないと図面すら見せられないなどと言う。
仕方なくお店に行くとなんだかんだ理由をつけて結局違う物件を勧められる。
そんな客寄せに使われてしまうのでは物元業者も安心して掲載許可を出せるわけがありません。
その後はインターネット掲載の規制強化で、上記のような業者は登録抹消や自主撤退で、掲載情報の質も幾分向上してきたと思いますが、大量に登録した後のメンテナンス不足で、契約済み物件の削除もれ等の苦情が後を絶たないのも事実です。
賃貸物件のような短期情報をインターネット掲載すること自体がそもそも無理なのかの知れませんが、利用する側はその点を踏まえた上での利用をせざるを得ないでしょう。
だから私はインターネットでの物件検索は無意味だと言っているのです。
まとめ
今はほとんど存在しない賃貸雑誌ですが、その衰退の原因とは一言で言えば情報のスピードと言えるでしょう。
インターネットの場合は各不動産業社が物件情報を入力したら数分後にはエンドユーザーが閲覧できるわけです。
しかし、その情報がおとり物件だったらどうでしょう。
いくら情報が早くても全く意味のないものになってしまいます。
残念ながらその昔、インターネット情報は、雑誌に比べるとはるかに情報の質の面で劣っていました。
現在では各検索サイトも一通りの規制を終え、情報の質もかなり向上したと思います。
ただ、利用料金体系もかなり変わり、「安くたくさんの情報登録」が出来たのは既に昔話になってしまいました。
それにより利用業者離れや契約サイトの鞍替えも進んだのです。
業者側は、料金が高く、しかも規制が多いこれらのサイトを利用するより、自社のホームページに検索機能を設ける業者もずいぶん増えました。
また、物件だけにとどまらずホームページまで丸ごと廉価で請け負うサービスも出てきて、まさに個の時代(物件ではなく業者そのものの良さのアピール)になったと言えるでしょう。
ということでこれからは物件本位のお部屋探しではなく、良質な不動産屋さん探しに時間を割いたほうがいいでしょう。
最後になりましたが、賃貸のプロである不動産屋さんが、皆さんが頼りにしている物件検索サイトを利用して物件を探していないという事実。
これだけとっても素人がパソコン叩いてたって、いい部屋が見つかるわけがない確固たる証拠です。
ということは、お部屋探しが決まったら、信頼できるプロに任せちゃった方がいかに効率的か。
そして今後はさらに「お部屋探しは不動産屋さん探し」という考えが進みますので不動産屋さん自体も目を引く物件で客引きをするのではなく、まさに個のアピールをしなければなりません。
不動産屋さんあるいはそこの社員個人が積極的に良質な情報を発信し、それを目にしたユーザーが「あなたに任せます」と言って来店あるいは接触してくるという営業方法が間違いなくこれからのお部屋探しのトレンドでしょう。