日本人の2人に1人が「がんになる」と言われています。
そして、保険会社も“がんになるリスク”をテレビCMなどで必要以上に煽り、がん保険への加入を勧めています。
実際、日本人の中で一番多いがんは「胃がん」と言われていて、その患者数は約21万人で年間約5万人が死亡しています。
また、乳がんについては欧米人と比べて日本人の罹患する確率は少ないと言われていましたが、乳がんで死亡する人は年々増加しており、2011年には約13,000人の女性が亡くなっています。
このように、私たちの周りにある“がんになるリスク”をがん保険で保障しようとする事は必要な事なのでしょうか、それとも不要なのでしょうか。
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がん保険って、もったいない??
雑誌やインターネットで、「がんになる可能性は低いのに、掛け捨てのがん保険に加入するのはもったいない」と言うFPの記事を目にします。そのFPは、「がんになっても治療費などは高額療養費などの公的医療制度があるので自己負担額は少なく済み、100万円程度の貯金があればがん保険は不要」「先進医療も利用する可能性は少ない」と言うのです。
こう言われると、たしかに「なんだ、がん保険って必要ないんだ」とあなたも思うかもしれません。確かに、治療費などは全額自己負担ではなく、高額療養費などの公的医療制度を利用する事は大前提です。しかし、「貯金が100万円あればがん保険は不要」と言うのは言いすぎではないでしょうか。
このような記事を書くFPは、大抵「治療費」の事しか触れません。がんになった場合、必要なお金は治療費だけではないはずです。
もしあなたに貯金がなかったら?
「貯金が100万円あればがん保険はいらない」と言う言葉を目にして、あなたに100万円の貯金がなかったらどうしますか?また、もしあなたが100万円の目標に向けて貯金を始めたばかりの時にがんになってしまったらどうしますか?
あなたに100万円の貯金があったとします。しかし、そのお金はがんの治療費として貯めようと思ったものですか?治療費などにそのお金を使ってしまった後の生活はどうなりますか?
様々な事をイメージしてみてください。
あなたはその100万円で足りると思いますか?
治療中のあなたの収入はどうなりますか?
もし、あなたが「がん」になって治療を始めた場合、がんの種類や進行度合いにもよりますが、抗がん剤治療やホルモン療法、外科的治療を行う事になると予想します。
ここで考えなくてはいけない事は、治療中のあなたの仕事についてです。
例を挙げて説明しますと、私の友人が数年前に乳がんになってしまいました。その女性は最初の入院は10日間ほど(入院期間中に手術も行う)でしたが、その後の約2年間は通院で抗がん剤治療を行いました。
彼女は通院期間中に仕事を4割ほどセーブして治療に通う必要がありました。そして、手術の際にリンパ説を切除した影響で、力仕事を少しでもすると腕が浮腫み(リンパ浮腫)、痺れや痛みを伴い1.5倍ほどに腕が腫れあがってしましました。その状態が長期間続いた事で、今まで出来た仕事も後輩に任せる事になり、自分が出来る仕事が少なくなってしまいました。
結果、彼女の収入は減り、治療費なども少なからずかかる事で生活は圧迫されていきました。
また別の女性の例では、乳がん発覚後、健康保険が適用の抗がん剤治療をしていましたが、使ううちに抗がん剤の効果が薄くなり、もうその頃には健康保険の適用外の抗がん剤しか選択肢が残っていませんでした。その抗がん剤は2週間で約40万円もするもので、全額自己負担でした。みるみるうちに貯金はなくなり、自宅での療養が増えた事で介護するために夫も残業が出来なくなり、収入が減った事で家賃の安い狭いアパートに引っ越しをしたと言うケースもあります。
私の言いたい事は、がん保険は治療費のカバーだけではなく、生活費の補てんにもなると言う事です。
医療保険とは違い、受け取る金額が多いがん保険
がん保険は一般的な医療保険と少し保障内容が異なります。
特に特化しているのは、がん診断給付金と言われる保障です。この保障はがんと初めて診断された時に一時金で100万円が支払われると言うもので、保険会社によっては数百万円と金額を自由に設定が出来ます。そして、昔はこのがん診断給付金は最初の1回のみの保障だったのが「2年に1度」と言うように再発や転移などの場合も再度受け取る事が出来るようになりました。
私は、このがん診断給付金を治療費だけではなく、収入が少なくなった時の生活費の補てんとして考えてもらいます。
実際、がんになってしまった前項の女性は入院給付金や手術給付金も含めて、総額で約350万円を受け取りました。彼女はこのお金で「数ヶ月先の生活の目途が立った」と喜んでくれました。
注意すべきは刺激的な言葉を使うFP
記事を書く私も、みなさんに読んでもらうために様々な工夫をしています。その工夫の中で、最も簡単なものが「刺激的な言葉を使う」と言うものです。刺激的な言葉は読み手に簡単に興味を抱かせます。そして読み手の印象に深く残ります。しかし、それが正しいかどうかは別問題です。
あなたが刺激的な記事を読んで自分のがん保険を解約した結果、その後がんになったとしても、多額のお金が必要になったとしても、がん保険を解約しなければ良かったと思ったとしても、誰も責任を負ってはくれません。
ましてや、記事の投稿者であるFPも勿論責任を取ってはくれません。全ては自己責任ですから、記事を見分ける目を持つ事も重要です。
結果まとめ
生命保険の原則として、「確率は低いが高額なリスク(いわゆる万が一)を想定する」と言う事があります。それを踏まえて考えた結果、資産数千万円以上の資産家などでなければ、がん保険に加入しておく事をお勧めします。
資産家であれば、がんになってもお金に困る事はないでしょう。それどころか、お金で買えるなら最新の治療法を行う事が出来るでしょう。資産家でないとしたら、がんの高額なリスクに備えておく事が必要です。
がん保険には保険料の高いものから安いものまであります。その中で、自分にどれが合うのかをしっかりと選ぶ事で、無駄な保険料を支払う事もなくなります。
がん保険の保障内容は各保険会社ごとに異なりますので、自分に何が合うのかわからない場合は、保険相談などで信頼出来るFPに相談をしてみましょう。そして、予算に余裕がある場合は積極的に検討する事をお勧めします。