『ウチで自動車保険加入してくれたら、もう少し安くしますよ?』
カーショップで自動車を購入する際に、値引き交渉の場でこう言われたことある人いませんか?実は、ディーラーさんのこの行為、法律違反なんです。やってはいけないことなんです。
あなたは知っていましたか?
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保険業法第300条第1項第5号「保険料の割引・割戻、特別利益の提供」
先ほどの行為、自動車保険への加入を取引条件に新車の価格を割り引く行為、これは保険業法第300条第1項第5号「保険料の割引・割戻、特別利益の提供」に抵触し、完全な違反行為となります。
違反をすると、保険代理店としての登録取り消しや業務停止命令の対象となります。
なぜディーラーの行為が保険業法違反となるのか?
ディーラーが自動車保険への加入を取引条件に新車の価格を割り引く行為が、なぜ保険業法違反となるのでしょうか?詳しく解説していきたいと思います。
保険業法第300条にはこう書かれています。
保険会社等若しくは外国保険会社等、これらの役員(保険募集人である者を除く。)、保険募集人又は保険仲立人若しくはその役員若しくは使用人は、保険契約の締結又は保険募集に関して、次に掲げる行為(次条に規定する特定保険契約の締結又はその代理若しくは媒介に関しては、第一号に規定する保険契約の契約条項のうち重要な事項を告げない行為及び第九号に掲げる行為を除く。)をしてはならない。
そして、300条第1項第5号では以下のことが具体的に禁止されています。。
保険契約者又は被保険者に対して、保険料の割引、割戻しその他特別の利益の提供を約し、又は提供する行為
ただ単に、ディーラーが新車の割引をする分には問題ないのですが、自動車保険への加入が値引きの条件となっていることで、新車の割引金額が、上記第1項第5号の「保険料の割引、割戻しその他特別の利益の提供を約し、又は提供する行為」に当てはまるのです。
違反行為と知っていても犯してしまう、その理由とは?
この違反行為、ディーラーは、販売店は、自動車会社は知らないのでしょうか?
こんなにも、メディアで「コンプライアンス」と言う言葉が溢れている現在、保険を取り扱っている立場として知らないと言うことは考えられません。
なぜなら、保険業法の徹底は保険販売をするにあたって必要最低限のモラルだからです。
ディーラーは、保険販売を専門とする「プロ代理店」ではありません。一番力を入れているのは自動車の販売です。しかし、親会社の意向や収益のために、生命保険や損害保険を売らなくてはいけません。いわゆる「ノルマ」です。
ディーラーは、自動車販売のノルマとは別に、保険販売のノルマも課せられています。これは店舗もそうですが、販売員1人1人に対しても課せられています。
中にはしっかりとした知識を持って顧客に接して、自動車保険を販売する人もいるでしょう。しかし、悲しいことにほとんどの人は自動車保険の説明もほどほどに、値引き交渉のエサとして提案するためだけに簡単な説明をしているのが現状です。
法律違反に加担してまで値引きを希望しますか?
これは、ディーラーのモラルの問題であるのと同時に、あなた自身のモラルの問題でもあります。
保険業法を犯しても消費者側に明確な罰則はありません。「自動車保険と引き換えに値引きをさせよう」なんてことを堂々と謳っているサイトもたくさんあります。
確かに自動車保険にはどちらにせよ加入しなければいけないですし、それで数万円の値引きがされるのなら嬉しいですよね。保険業法違反なんてことを知らなければ、誰だってこの話に乗ってしまうでしょう。
自分を大切にしていますか?その補償内容は大丈夫ですか?
本来、自動車保険に加入する際には複数の自動車保険を比較したり、代理店に相談したりしながら、自分がどんな状況で運転をするのか、どんな補償が必要なのか、特約は何が必要なのか、などをじっくりと吟味して加入をします。
そうすることで、あなたが万が一事故に遭ったとき、事故を起こしたときに、しっかりとあなたを守ってくれるものになるのです。
もし、「数万円安くなる」と言う営業トークの流れで、その場でなんとなく自動車保険の手続きをしてしまったとしたら、あなたを、あなたの家族を万が一のときに守ってくれる補償内容になっていない可能性もあります。
自動車保険はネットで加入できる時代ですから、手続きは簡単です。しかし、手続きが簡単だからと言って自動車保険も簡単と言う訳ではありません。
事故に遭ったり、事故を起こしたりしたときに数千万円が動く契約です。示談交渉に数ヶ月、長いものでは数年かかるものも少なくありません。
交通事故の示談交渉を経験したことのある人ならすでに知っているかもしれませんが、相手方との交渉は精神的にも時間的にも思い負担がかかります。そんな大事なものを保険でカバーするのですから、数分、数十分ですぐに契約できるものではないのです。
ディーラーから持ち掛けることは少なくなってきているが・・・
先ほどもお伝えした通り、自動車保険への加入を取引条件に新車の価格を割り引く行為は保険業法第300条第1項第5号「保険料の割引・割戻、特別利益の提供」に抵触し、完全な違反行為です。
最近ではようやく、少しずつではありますが、この行為自体をディーラーが勧めることをしなくなってきました。ただし、陰でコソコソとしているケースも少なくありません。
もちろん、自動車の購入者が自動車保険の加入と引き換えに値引きをするように持ち掛けても、結果的に「保険料の割引・割戻、特別利益の提供」となりますので、違反行為となります。
ディーラーにも信頼できる担当者は存在する!
ディーラーの中にも顧客第一を考えて、自動車保険の説明をしっかりとしてくれる人も中にはいます。そう言った人の名誉のために言いますが、このような誠実な人は自動車の販売手法も誠実で、簡単に「値引き交渉」したりせずに、購入者は何を希望しているのか、どんな機能・デザインを求めているのかを考えて提案をしてくれます。
なので、このような担当者に巡り合えたら、自然と「自動車保険もこの人に任せようかな」と思うはずです。
そもそも、顧客の希望に沿った提案ができずに、安易に値引き交渉に入るような営業マンからは大切な新車は買いたくないですよね。もしもその担当から買ったら、アフターフォローも「その人」になる訳ですから。
もう何となくわかってきましたね。自動車保険の加入をエサに新車の値引き交渉をするディーラーは、そもそも営業能力が低い人たちが多いのです。もし、あなたが新車購入の際に、そんな話を持ちかけられたら、優しくこう伝えてあげましょう。
「それって、保険業法に抵触する違反行為ですけど大丈夫ですか?」