「冬期うつ病」という季節性の病気をご存知でしょうか。
冬のどんよりした曇り空を見ていると気分が落ち込んでくる…それは冬期うつ病かもしれません。どのような症状なのか、悪化させないためにはどうしたらいいのか、本人はもちろん、家族や大切な人が冬期うつ病になったときの対策も知っておきましょう。
目次
冬期うつ病の症状は?
冬期うつ病は、症状が出るのが「冬」に限定されているだけで、症状としては一般的なうつ病と同じです。
最初は食欲不振やよく眠れない、といったことから始まり、疲労やストレスが原因だろうと放置しておくと段々悪化していきます。
- 仕事に行く気がしない
- 好きなことも楽しめない
- すぐに疲れてしまう
- 眠くて朝起きられない
- 甘いものが無性に食べたくなる
秋から冬にかけてこのような症状が続いていたら冬期うつ症状を疑った方がいいでしょう。
まず休む、これが大事
ただ疲れているだけ。そう自分に言いきかせながらがんばっている人がたくさんいます。でも、これらの症状は心と体からのサインです。決して無視してはいけません。
また、家族、友達、同僚に疲労が続いている、眠れなくて困っている、という人がいたら休むようにアドバイスを。日本人は休むのが下手ですから、周りから言ってあげないと無理してしまう人が多いんです。
しっかり眠るだけでも体力が回復します。身体を休めることが出来れば、心も回復しやすくなるからです。
冬期うつ病の原因は?
冬期うつ病の原因は、ずばり「日照不足」です。日光に当たる時間が少ないと、人は心が萎えてくるんですね。
北欧諸国では、冬期うつ病の発症率が人口のおよそ1割もあるそうですよ。また、南国から北国に引っ越した人など、それまでの生活環境ががらりと変わり太陽光がいきなり減ってしまった人の方が発症しやすいそうです。
目からの光の刺激が足りない
私たちは目からの光の刺激を受けて体内時計やホルモンバランスを整えています。暗くなるとメラトニンという物質が分泌されて段々眠くなってきます。
逆に明るいところを見る、日光を浴びるなど目から光の刺激を受けるとセロトニンが増えて気分を爽快にし、目を覚まします。このとき、メラトニンの分泌量は減っていきます。
夜寝る直前までスマホを見ていたりすると寝つきが悪くなるのは、いつまでも目から光の刺激を入れているのでメラトニンが分泌されず、眠くならないから。冬期うつ病はこれと逆のことが起こるわけです。
ずっと曇った空のもとで暗い1日を過ごしていると、セロトニンが分泌されず、メラトニンが出っぱなし。なかなか活動的にはなれないんですね。
セロトニン不足はうつ病の原因とされていますから、セロトニンの分泌量を増やすことが冬期うつ病の改善の鍵になってきます。
春になると元気を取り戻す
秋から冬にかけて段々日が短くなっていくに連れて症状が悪化し、春先になって日が長くなってくると自然と気持ちも明るくなって回復してくるようです。
男性よりも女性に発症しやすい病気だと言われています。
冬期うつ病の対処法
季節が原因なのはわかりましたが、雪の多い北国、日本海側の地方では冬はどんよりした日が続きます。天気ばかりはどうしようもありませんよね。
そういった場合は、どのように対処したら良いのでしょうか。
病院での薬物療法
薬物療法というと怖いイメージを持っている人もいるかもしれませんが、抗うつ剤というのはセロトニン不足でうまく機能していない脳の状態を改善していくことが目的なので、指示通りにきちんと飲んでいれば心配はいりません。
人によっては副作用が出ることもありますが、それはどんな薬でもあり得ることですよね。これは副作用?と思ったらまず主治医に相談することです。
光療法で日照不足を補う
お天気が回復して欲しい、と思ってもこればかりは思い通りにはなりませんので、少ない太陽光を人工の光で補います。それが光療法です。
光を浴びることで体内時計を正常化し、セロトニンとメラトニンの分泌を正常化していく方法です。
青魚を食べよう
さば、あじ、さんまなどの青魚には、DHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)という脳の機能を活性化させる脂肪酸がたっぷり含まれています。
青魚を食べると頭が良くなる、なんていいますよね。青魚は認知症予防にも良いとされていますし、抗うつ効果が期待されているんですよ。
実際、北欧にあり日照時間も短いアイスランドでは、周囲の国々と比較して冬期うつ病の発症率が低いのだそうです。それはアイスランドの食事が魚中心で、特に青魚が食べられているからだと考えられています。
周囲が出来るサポートとは?
家族や友達が冬期うつ病と診断されたら、周りの人にはどんなサポートが出来るでしょうか。
ゆったりした気持ちになってもらうこと
原因が「冬」だとわかったところで本人にはどうしようもありません。それよりは、少しでも明るく、気分よくゆったりと過ごしてもらうことを心がけましょう。
かといって、無理をさせないようにすることが大事で、「こうすればよくなる」など本人を焦らせるような言動は禁物です。
本当に体調が悪い時は気分転換することすら難しいのです。体調を見ながら、本人のペースに合わせてゆっくり治療を進めていきましょう。
責めない、否定しない
風邪などと違って、心の病はその人の性格が問題視されたり、やる気がないからだと責められたりして、余計に本人を追い込んでしまうことがあります。
もちろん、物事の考え方や捉え方によってもうつになりやすい人がいるのも事実です。いくら日照不足が原因といっても、暗いところに住んでいる人がすべてうつ病になるわけではありません。時間をかけて考え方や性格、生き方を変えていく必要がある場合もあります。
しかし、今それを責めてもうつが改善されるわけではありませんし、何より本人の気持ちが伴わなければ考え方や性格など変わりません。
うつ病が改善されるまでは、相手の話に真摯に耳を傾け、その気持ちを理解するという姿勢が大切です。
天気のいい日は一緒に散歩しよう
日照不足とはいっても、気持ちのいい冬晴れの日もやってきます。そんな日は一緒に外に出て散歩をしましょう。
何より安心してもらうことが大切。支えてもらっているという事を感じられるだけでも、それが安心感につながって治療もスムーズに進むのです。
誰でもなりうる病気です
冬期うつ病なんて、私は無関係!と思うかもしれませんが、風邪と同じ、心の病は誰だってかかる可能性のある病気です。
ですが、原因や対処法を知っていれば安心ですよね。むしろ「私はうつなんかじゃない」と現実を受け入れずにがんばりすぎる方が問題です。疲れたら休む、自分の心も持て余してしまったら誰かに助けを求める、ということを忘れないでいて欲しいと思います。