震災が起こって避難しなければならないとき、最低限必要なものがあります。
- 飲料水や食べ物
- 健康保険証や免許証など
- 現金
- その他の生活必需品
しかし、その中で災害用トイレの需要が高まっていることをご存じでしょうか。
避難生活が続くと、飲料水や食べ物の不足だけでなく、衛生面の問題が出てきます。そのひとつが「トイレ問題」なのです。
そこで、なぜ避難生活で災害用トイレの必要性が高まっているのかを一緒に見ていきましょう。
目次
避難生活での災害用トイレの必要性
災害用トイレはなぜ必要なのでしょうか?
その理由とは、主に「衛生面の問題」と「避難者の健康面」の2つと言われています。
衛生面の問題
震災が起こると上下水道が損壊したり停電や断水が起こったりして、トイレの水を流すことができなくなります。
水が流れないことを知らずにトイレを使い続けてしまうと、トイレはあっという間に大小便などの汚水であふれてしまいます。
トイレの衛生環境が悪くなってしまうと、不衛生で使いずらいだけでなくノロウィルスなどの感染症が発生する温床となる可能性が高まります。
また、配給される水は第一に飲料水としての役割が大きく、トイレに流す水としては考えられてないために余計にトイレ環境の悪化が懸念されます。
現在では、阪神・淡路大震災の教訓から、災害用トイレの早急な設置は重要事項になりつつあります。
避難者の健康面の問題
停電や断水が起こり、トイレの水が流れなくなりトイレ環境が悪化すると、不衛生になり避難者がトイレを利用することをためらうようになります。
近くのトイレが「使えない」と判断すると、遠くのトイレに行かなくてはいけなくなったり、トイレに行くこと自体を我慢するようになります。また、トイレを我慢するために水分を摂る量や頻度を少なくしたりもします。
すると、体内の水分量が少なくなり、エコノミークラス症候群を発症したり、最悪の場合には脳梗塞や心筋梗塞などの震災関連死に繋がってしまう恐れもあります。
<参考記事>
また、トイレが使える避難所でも、そこに集まる避難者によって長蛇の列が発生し、特に女性用トイレの不足が阪神・淡路大震災や東日本大震災で大々的に報道されました。
女性は、男性のように「ちょっと物陰で」と言う訳にはいきません。衛生面の他にも女性は犯罪に巻き込まれると言った危険もありますので、トイレ不足は深刻な問題なのです。
災害用トイレの活用によるメリット
仮設トイレの問題点
災害時の避難所のトイレとして真っ先に思い浮かぶのは仮設トイレじゃないでしょうか。
しかし、仮設トイレが避難所に設置されるまでには時間がかかると言うことはあまり知られていません。
阪神・淡路大震災のときには仮設トイレが十分に行き渡るまでに1週間もかかりました。東日本大震災のときには、宮城県、福島県の特定被災地方公共団体によると、3日以内に避難所に仮設トイレが設置されたのはそのうちの34%、一方で8日以上かかった避難所は49%もありました。
また、仮設トイレで一番多いのが、工事現場などで見るタイプのもので、段差があったり洋式がなかったり、暗くて狭かったりと、子どもや高齢者も利用することを考えると避難所には適さないものが多いことも問題点です。
災害用トイレの特徴
災害用トイレは使用期間な緊急性などによって大きく5つのタイプに分かれていて、それぞれ特徴が異なります。
携帯用
震災直後など、組立式トイレ等が設置されるまでの短期間の使用や自宅避難時の使用に適しています。使用する際にはプライバシーを保つための工夫が必要です。
1回分で数百円とコストもかからないため多めに備蓄しておくと便利なので、家庭やオフィスなどで使用するのに適しています。
しかし、し尿袋が破れたりする恐れもあるため臭いや衛生面には気をつける必要があります。
【使用期間:数日~1週間程度】
簡易トイレ
簡易トイレは個室さえあれば設置して使用することができ、段ボールなどで簡単に設置・組み立てができるタイプもあります。
パーテーションで区切ることができれば福祉避難スペース等でも利用できるが、し尿袋の保管や回収などの衛生面に気をつける必要があります。
【使用期間:数日~1週間程度】
マンホール式トイレ
マンホール式トイレは、下水道管に接続する排水設備上に便器や仕切り施設等を設置するもので、本管直結型及び流下型のマンホールトイレは、下流側の下水道管や処理場が被災していない場合に使用することが条件です。
汲み取りが不要で使用人数に制限がない反面、管路工事など発災前から準備をする必要があります。
ただし、震災などでマンホール自体が隆起している場合には使用できません。
【使用期間:数日~1ヶ月程度】
災害用仮設トイレ
通常の仮設トイレの機能に加え、テントのついたものや折り畳み式で保管・運搬が比較的容易なタイプも出てきています。
屋外に設置することが多いため、避難所の外部の人や新しく避難してきた人も使用できますが、外部設置のため夜間などは電気を点けるなどの工夫が必要です。
災害用仮設トイレには手すりのあるタイプやバリアフリータイプのものもあるため、女性や高齢者の多い避難所から優先的に設置するようにしましょう。
【使用期間:1週間~数ヶ月程度】
その他の災害用トイレ
画像引用元:株式会社ハマネツ『車載トイレ – TU-L Series –』より
その他には自己処理型トイレや車載トイレなどがあります。
自己処理型トイレは処理装置を備えており、汚水を排水しない水循環式と、おが屑等によるコンポスト式、乾燥・焼却式があります。
車載トイレとは、トイレ設備を備えた車両を指し、し尿を貯留するタイプや処理装置を備えたタイプがあります。
災害用トイレのまとめ
災害用トイレはその使用期間や環境によって選ぶものが異なります。
そして、震災が起こってすぐに災害用トイレの設置を始めることで、避難所での衛生面を保つことができ、女性に対しての防犯面での貢献もあります。
自宅やオフィスなどには震災が起こっても大丈夫なように、数日間分の携帯トイレを備蓄しておくといいでしょう。