最近話題のモンテッソーリ教育。筆者の家の近くにもモンテッソーリ教育を行なう幼稚園があり、いったいどんな教育をしているのか気になる存在となっていました。また、近年将棋界で大活躍中の藤井聡太さんや、Facebookの創始者マーク・ザッカーバーグ氏などの有名人も幼少期にモンテッソーリ教育を受けていたということで、クリエイティブな力を子供につけさせるのにモンテッソーリ教育は最適なのではないかと近年注目が高まっていますね。
今回は元高校教員でもあり大学で教育学を学んでいた筆者が、モンテッソーリ教育について調べたことを一挙紹介します!
目次
モンテッソーリ教育とは?
1907年にイタリア初の女性医師「マリア・モンテッソーリ」が提唱した教育法で、「自立していて、有能で、責任感と他人への思いやりがあり、生涯学び続ける姿勢を持った人間を育てる」ことを目的とした教育です。「子供に自分でやりたいことを決めさせる」ということを主軸にしています。
それまでは「教育は各人の経験からくるもの」だと考えられていましたが、マリアは、「エビデンスを元にして教育を行なう」という全く新しい教育法であるモンテッソーリ教育を生み出しました。
モンテッソーリ教育の分野
モンテッソーリ教育では、0歳〜6歳までの乳幼児期の発達段階を0歳〜3歳までの前期と、3歳〜6歳までの後期に分けています。それぞれの発達段階に表れる特徴を踏まえて教育の分野を設定しているのですよ。
前期の教育分野
この時期は、「吸収する精神の時期」と呼ばれ、人生の中で最も物事の吸収力が高く、その後何年もかけなければ身に付けられないような能力をたやすく獲得できる時期です。モンテッソーリ教育ではこの時期に7つの分野の教育活動を行ないます。
- 粗大運動の活動
- 微細運動の活動
- 日常生活の練習
- 言語教育
- 感覚教育
- 音楽
- 美術
粗大運動とは歩いたり、階段の上り下りをしたりする全身を用いた大きな運動を指します。この時期にはハイハイから歩行までの運動の獲得を目指します。微細運動とは物を握ったり、叩いたりするような手先を用いた運動のことです。
後期の教育分野
この時期は「意識の芽生えの時期」と呼ばれ、前期で習得したことを、整理しながら秩序化していく時期です。この時期の教育活動は5つの分野に分けられ、自己教育力を養うことに主軸が置かれます。
- 日常生活の練習
- 感覚教育
- 言語教育
- 算数教育
- 文化教育
日常生活の練習、感覚教育、言語教育は前期と後期どちらにも入っていますが、それぞれの発達段階に応じて、教具やアプローチの方法を変えてより高度な教育を行っていきます。
モンテッソーリ教育の手順
では、具体的にモンテッソーリ教育を行うために何から始めていくのか、順を追って見ていきましょう。
子供の現在の成長段階を知る
子供は最終的には皆同じ発達の過程を辿り、能力を習得していきますが、そのスピードは子供によって個人差があると言われています。子供1人ひとりが今発達のどの段階にあるのかを知り、何をいつ与えるのかを把握することが必要です。
環境を整える
子供の教育がスムーズに行われるように工夫をします。例えば、おもちゃを収納する棚であれば、何が入っているのか見やすく、取り出しやすい物にし、子供が自分で取り出しから片付けまでをできるようにするのが大切です。
子供の発達段階によって工夫することが重要で、0歳〜1歳の時は棚の一番下に、1歳〜2歳の時は立った高さの位置におもちゃを置きます。自分で歩けるようになったら、トレーの上におもちゃを置いてあげて、自分で持ち運びできるようにしてあげると良いのだとか。
3Mで教える
3Mとは、
- 見ていてね
- 待っていてね
- もう一度やるから見ていてね
上記の3つのキーワードの頭文字のアルファベットMのこと。基本的には、「見本を見せて子供に真似をさせることで知識を教授する」ということですね。モンテッソーリ教育で用いるおもちゃは教具と言われ、基本的にはこれらを使って教育をしますが、専用の教具は高価なものが多いです。普通のおもちゃではモンテッソーリ教育ができないわけではないので、家にあるおもちゃで代用も可能。
子供に知識や知恵を教授する場面を提供(または提示)と言います。提供を行うにあたってのポイントは以下の3つです。
子供を誘う
子供が乗り気じゃないのにやらせてはダメです。あくまで自主性が大切。そのため、まずは子供を誘ってみて、子供にやる気があれば提供を行うという流れです。
活動する場所を決める
活動する場所はどこでも良いというのではなく、決まった場所に設定することが大切です。「ここに来れば活動をする」と子供の中で認識ができるので、集中力が上がります。視界に入るものが少ない方が活動に専念できるため、活動場所の椅子は、壁に向かって置き、足がつくものを選びましょう。
子供の利き手側にいることを心がける
先ほどもあげたように、活動の際に視界に入るものが少ないほど集中力が上昇するので、そばにいる際には子供の利き手側にいて、できるだけ子供の邪魔にならないようにしましょう。
子供の能力を引き出す心得で見守る
子供の行動の全てを受け入れましょう。子供は、親の期待する通りの行動ばかりするわけではなく、時には理解不能なことや期待外れなことをしてくる時もありますよね。ですが、そこで「ダメでしょ!」と怒ってはいけません。例えば、子供がティッシュをたくさん箱から引っ張り出していたりすることがあるかと思います。親からすれば、使わないのにもったいないからやめてほしいと思うかもしれませんが、子供が手先を使って自分の興味を示した物に対してアプローチしている場面だと捉えると、「自分で能力を得ようとしている」と考えることができます。このような場合は、子供が満足するまで行動を続けさせることが大切なのです。
さらに、子供はそれぞれ発達のスピードが異なるため、他の子と比べたりするのも良くありません。子供ができるようになるまで気長に待ちましょう。不必要な手助けはかえって子供の成長の妨げになると考えられるため、親がなんでもしてあげすぎるのも避けるべきですね。
普通の教育との違い
普通の教育と大きく異なるのは、「自分でなんでも決めさせる」ところです。普通の幼稚園では、決まった時間にみんなで歌ったり、町へ出かけたりとある程度カリキュラムがありますが、モンテッソーリ教育を行う幼稚園では、基本的に子供の興味に応じて好きなことをさせます。モンテッソーリ教育の幼稚園に通っていた筆者の知人は、幼い頃絵の具を混ぜて心ゆくまで色水を作らせてもらったことが楽しかったと話していました。
良かれと思って子どもにあれこれ指示を出すことは、実は指示を待つだけの大人を量産することにつながるのかもしれませんね。
幼児期以外でも行なわれているの?
海外では幼少期から大学まで行なわれているモンテッソーリ教育。日本でも幼稚園・保育園の数は年々増加してきていますが、まだまだその数は少なく、小学校でモンテッソーリ教育を行っているところは、全国でも3校しかありません。
モンテッソーリ教育を受けたと言われる有名人は?
棋士の藤井聡太氏、Facebookの創始者マーク・ザッカーバーグ氏、オバマ元大統領、ヒラリークリントン氏、ビルゲイツ氏、Googleの創始者ラリー・ペイジ氏とセルゲイ・ブリン氏などがモンテッソーリ教育を受けたと言われています。
まとめ
子どもの興味に応じて教育を行なう「モンテッソーリ教育」。親や教師はあれもこれもできるようになってほしいという思いから、つい子どもの関心を無視して教育内容を考えがちですが、自分で決めて何かをやり遂げる経験が子どもの成長に最もつながるのだと思いました。まだまだ小学校以上では日本に浸透していませんが、モンテッソーリ教育の考え方を家庭で取り入れることも可能ですので、通園させるだけではなく、普段の家庭での子どもへの接し方の参考にすると良い効果が得られそうですね。
[最終更新日]2020/11/10 |